ダブルワーク(Wワーク)のパートを採用すると残業代は1時間目から?副業・兼業の労働時間通算を解説
2026.09.05
本業で週40時間働いている人を、ダブルワーク(Wワーク)のパートとして採用する場合、「パート先でも1時間目から残業代(割増賃金)が必要なのか」「通常のパートと契約は違うのか」と迷う企業担当者は少なくありません。
原則的な労働時間管理では、本業とパート先の労働時間を通算して判断します。本業の所定労働時間だけで法定労働時間の枠を使い切っており、後から自社と労働契約を結ぶケースでは、自社で働く時間が1時間目から法定時間外労働となり、25%以上の割増賃金が必要になることがあります。
この記事では、実際に寄せられた「Wワークのパートを採用したい」というご相談をもとに、割増賃金、労働時間の通算、36協定、時間外労働の上限規制まで、採用前に確認したいポイントを整理します。
目次
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ご相談内容|ダブルワークのパートを採用する場合、残業代は必要?
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結論|本業で週40時間の所定労働がある場合、パート先で1時間目から割増賃金が必要になることがあります
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ダブルワークでも、パートの労働契約そのものが特別になるわけではありません
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なぜ本業とパート先の労働時間を合算する?|労働基準法38条1項
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どちらの会社が残業代を払う?|所定労働時間は「契約の先後」で通算
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「週40時間勤務」の意味を確認|所定労働時間か、残業込みの実労働時間か
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深夜割増・休日割増はどうなる?
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ダブルワークのパート採用では36協定にも注意
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時間外労働の上限規制|通算するもの・しないもの
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採用前に確認したい5つのチェックポイント
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よくある質問(FAQ)|ダブルワーク・パート採用の労働時間と残業代
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まとめ|ダブルワークのパートは「採用前の労働時間確認」が重要
ご相談内容|ダブルワークのパートを採用する場合、残業代は必要?
いただいたご相談は、次のような内容でした。
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■ご相談
Wワークでパートに応募してきている方がいます。本職では週40時間勤務していて、当社の現場でパートとして働きたいとのことです。
この場合、割増賃金を支払わなければならないのでしょうか?Wワークの方は、通常のパートと労働契約が何か違うのか教えてほしいです。
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人手不足の現場では、「土日だけ」「夕方から数時間だけ」働ける人を募集した結果、ダブルワークを希望する方から応募が来ることがあります。
応募者本人が「本業に支障はない」と話していても、企業側には労働時間や割増賃金を適切に管理する必要があります。
結論|本業で週40時間の所定労働がある場合、パート先で1時間目から割増賃金が必要になることがあります
一般的な1週40時間・1日8時間の法定労働時間が適用されるケースを前提にすると、本業で週40時間の所定労働時間があり、その本業の契約より後に自社がパートとして雇用する場合、自社の所定労働時間は原則として1時間目から法定時間外労働となります。
自社は、その時間について25%以上の時間外割増賃金を支払う必要があります。
たとえば通常の時給が1,200円で、時間外割増率が25%なら、対象時間の賃金は1時間あたり1,500円です。採用時にこの点を見落とすと、想定していた人件費と実際の支払額に差が出る可能性があります。
▼以下をまず確認しまょう
本業の「週40時間」が
・所定労働時間なのか
・残業を含む実労働時間なのか
これによって結論は変わります。さらに、1日8時間の基準や、業種・規模によって適用される特例もあるため、個別の勤務条件を確認して判断する必要があります。
ダブルワークでも、パートの労働契約そのものが特別になるわけではありません
「Wワークの人は通常のパートと別の契約にする必要があるのか」という質問もよくありますが、ダブルワーク専用の労働契約類型があるわけではありません。労働条件の明示など、基本的な雇用手続きは通常のパート採用と同様です。
一方で、ダブルワークの採用では、特に次の点を確認する必要があります。
•本業と自社の労働時間をどのように通算するか
•通算後に法定時間外労働が生じる場合、36協定の範囲内か
•社会保険・雇用保険・労災保険をどのように扱うか
本記事では、主に労働時間の通算と36協定について解説します。社会保険・雇用保険・労災保険については、関連記事で整理します。
なぜ本業とパート先の労働時間を合算する?|労働基準法38条1項
労働基準法38条1項では、労働時間について「事業場を異にする場合」でも通算する考え方が定められています。この「事業場を異にする場合」には、事業主が異なる場合も含まれると解されています。
つまり、雇用契約を結んで会社員として働く本業と、別会社のパート・アルバイトを掛け持ちする場合も、労働時間通算の対象になります。なお、副業がフリーランス・個人事業主としての業務である場合など、労働基準法上の労働者として働くケースとは扱いが異なります。
どちらの会社が残業代を払う?|所定労働時間は「契約の先後」で通算
厚生労働省が示す原則的な労働時間管理では、労働時間を次の順序で通算します。
• 所定労働時間:労働契約を締結した先後の順に通算
• 所定外労働時間:実際に所定外労働が行われた順に通算
通算した結果、自社の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自社で労働させた時間について、自社が割増賃金を支払います。
今回の相談では、本業の契約が先で、その所定労働時間だけで週40時間に達していることが前提です。そのため、後から契約するパート先の所定労働時間は、原則として1時間目から法定時間外労働になります。
ただし、「後から契約した会社が常にすべての残業代を負担する」と単純化するのは適切ではありません。所定外労働がある場合は、その発生順も含めて通算する必要があります。
「週40時間勤務」の意味を確認|所定労働時間か、残業込みの実労働時間か
ダブルワークのパートを採用する際、最初に確認したいのが、本業の「週40時間」という申告の中身です。
(例)
本業の所定労働時間が週40時間
→ 後から契約する自社の所定労働は、原則として全時間が割増対象
本業の所定労働時間が週38時間45分
→ 週40時間までの残り1時間15分は、週単位では法定内となる余地がある(1日8時間の基準にも注意)
本業が月~金で週40時間、自社が土曜のみ
→ 「本業の休日に働く」場合でも、週の法定労働時間を超える部分は時間外労働になり得る
「本業が休みの日だから残業にはならない」という判断はできません。
法定労働時間は1日・1週の基準で確認するためです。
採用時には、本人から本業の所定労働日・所定労働時間、契約締結時期、所定外労働の見込みなどを申告してもらい、必要に応じて書面で確認できる運用を整えておくとよいでしょう。
深夜割増・休日割増はどうなる?
時間外労働の通算と、深夜労働・休日労働の扱いは分けて考える必要があります。
•深夜割増:
22時~翌5時に自社で働かせた場合、自社で25%以上の深夜割増が必要
•休日割増:
法定休日の規定は事業場をまたいで通算せず、自社における法定休日かどうかで判断
時間外労働と深夜労働が重なる場合などは割増率も変わるため、シフト設計時に確認が必要です。
ダブルワークのパート採用では36協定にも注意
割増賃金だけでなく、36協定も重要です。通算の結果、自社での労働が法定時間外労働になる場合、自社は36協定を締結・届出し、その延長時間の範囲内で働かせる必要があります。
短時間のパートしか雇っておらず、自社単独では法定時間外労働が発生しないため36協定を締結していなかった会社でも、ダブルワーク人材を採用することで法定時間外労働が生じる可能性があります。採用前に、自社の36協定の有無と内容を確認してください。
時間外労働の上限規制|通算するもの・しないもの
副業・兼業では、時間外労働の上限規制についても、他社分を通算して判断するものと、自社分のみで判断するものがあります。
上限規制の整理
通算して適用:時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満/複数月平均80時間以内
各事業場で判断:36協定の限度時間(月45時間・年360時間)や、特別条項における年720時間の上限など
本業で残業が多い人をパートとして採用する場合、自社での勤務時間が短くても、通算後の労働時間が長時間になる可能性があります。
厚生労働省は、労働者からの申告等によって副業・兼業先の労働時間を把握する方法や、管理負担を軽減する「管理モデル」を示しています。
採用前に確認したい5つのチェックポイント
✓本業も「雇用契約」か。フリーランス等ではないか
✓本業の所定労働日・所定労働時間は何時間か
✓本業と自社の労働契約は、どちらが先に締結されたか
✓本業で所定外労働・残業がどの程度見込まれるか
✓自社に有効な36協定があり、予定する勤務がその範囲内か
採用後も副業・兼業の状況が変わる可能性があるため、申告内容を更新してもらうルールを就業規則や社内手続きで整えておくことが重要です。
よくある質問(FAQ)|ダブルワーク・パート採用の労働時間と残業代
Q1.ダブルワークのパートは、必ず時給を1.25倍にしなければなりませんか?
必ずではありません。本業と自社の労働時間を通算した結果、自社で働かせた時間が法定時間外労働に該当する場合、その対象時間について25%以上の時間外割増賃金が必要です。本業の所定労働時間や契約の先後などによって結論は変わります。
Q2.本業が休みの土日だけパートで働く場合も残業扱いになりますか?
本業の休日かどうかだけでは判断できません。本業と自社の労働時間を通算し、1日・1週の法定労働時間を超えるかを確認します。本業の所定労働時間がすでに週40時間で、後から自社と契約するケースでは、土曜の勤務が法定時間外労働になることがあります。
Q3.Wワークの人を採用するだけで36協定が必要ですか?
Wワーク人材を採用すること自体で直ちに必要になるわけではありません。ただし、労働時間を通算した結果、自社で法定時間外労働をさせることになる場合は、自社で36協定の締結・届出が必要です。
Q4.本業の労働時間は、企業が毎日確認しなければなりませんか?
原則的な方法では、労働者からの申告等により他社での労働時間を把握して通算します。実務負担を軽減するため、厚生労働省は一定の条件のもとで「管理モデル」も示しています。具体的な運用は勤務形態に応じて設計する必要があります。
まとめ|ダブルワークのパートは「採用前の労働時間確認」が重要
•ダブルワークでも、通常のパートと別の特別な労働契約があるわけではない
•複数の会社に雇用される場合、労働時間は原則として通算して判断する
•本業の所定労働時間が週40時間で本業の契約が先なら、後から契約するパート先の所定労働が1時間目から割増対象になることがある
•本業の「週40時間」が所定労働時間か、残業込みの実労働時間かを確認する
•法定時間外労働が生じる場合は、割増賃金だけでなく自社の36協定も確認する
ダブルワークのパート採用は、人手不足への対応策になる一方、採用後に労働時間の前提が判明すると、追加の割増賃金やシフト見直しが必要になることがあります。面接・採用の段階で本業の勤務条件と副業・兼業の状況を確認し、採用後も申告内容を更新できる運用を整えておくことが、トラブル防止につながります。
制度見直しの動向について
副業・兼業時の割増賃金算定における労働時間通算については、制度見直しが検討されています。ただし、2026年8月時点では現行の通算ルールを前提とした実務対応が必要です。今後の法改正・施行時期については、厚生労働省の最新情報をご確認ください。
参考
•労働基準法38条1項、昭和23年5月14日 基発769号
•厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」および関連資料(厚生労働省「副業・兼業」ページ掲載。パンフレットは令和7年3月31日改定版)
本記事は2026年8月時点で確認できる法令・厚生労働省資料等に基づく一般的な解説です。個別の事案について結論を保証するものではありません。実際の判断にあたっては、所轄の労働基準監督署または専門家にご確認ください。
