ダブルワーク(Wワーク)の労働時間管理はどうする?他社の勤務時間の把握方法と「管理モデル」を解説

2026.09.05

ダブルワーク(Wワーク)の社員・パートを雇用するとき、「本業の会社で何時間働いたかまで毎月確認しなければならないのか」「他社の勤怠まで正確に管理するのは難しい」と悩む企業担当者は少なくありません。

複数の会社と雇用契約を結んで働く場合、労働基準法上、一定の労働時間規制については勤務先をまたいで労働時間を通算して管理します。一方で、会社が副業先の勤怠を直接管理するわけではなく、原則として本人からの申告等をもとに必要な情報を把握します。

この記事では、ダブルワークの労働時間管理について、原則的な管理方法、厚生労働省が示す簡便な「管理モデル」、シフト管理、賃金設計、自己申告ルールまで実務の流れに沿って整理します。

「なぜ労働時間を通算するのか」「どの会社に割増賃金が発生するのか」を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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目次

ダブルワークの労働時間管理|まず押さえたい結論

ダブルワークの労働時間管理では、自社の勤怠だけを見ればよいとは限りません。本人が複数の会社で「労働者」として雇用されている場合、法定労働時間や一部の上限規制について、各社の労働時間を通算して判断する必要があります。

ただし、他社の勤怠データを企業同士で毎日共有することまで求められているわけではありません。厚生労働省は、労働者からの申告等によって副業・兼業の有無や内容を確認する方法を示しており、さらに通算管理の負担を軽減する「管理モデル」も用意しています。

【この記事の要点】
・原則:本人の申告等により他社の労働時間を把握し、自社分と通算して管理する
・簡便な方法:あらかじめ各社の労働時間の上限を設定する「管理モデル」を活用する
・実務上のポイント:採用時の確認だけで終わらせず、変更時の再申告・シフト上限管理まで仕組みにする

そもそも、ダブルワークではなぜ他社の労働時間も確認する必要がある?

労働基準法38条1項では、労働時間に関する規定について「事業場を異にする場合」でも通算する考え方が定められています。事業主が異なる複数の会社で雇用されている場合も、この対象に含まれます。
そのため、たとえば本業で会社員として働き、別会社でもパートとして雇用されるケースでは、一定の労働時間規制について本業とパート先の時間を合算して判断します。なお、副業先が業務委託・フリーランスなどで、労働基準法上の「労働者」に当たらない場合は同じ扱いにはなりません。
「本業で週40時間働く人を後からパート採用した場合、なぜ自社の勤務が時間外労働になり得るのか」という基本ルールは、以下記事で詳しく解説しています。本記事では、そのルールを前提に、採用後の管理方法に絞って説明します。

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ダブルワークの労働時間管理で、会社が確認する情報

原則的な方法で労働時間を通算するには、少なくとも次の情報を本人から申告してもらう必要があります。

 • 副業・兼業先の事業場名や業務内容
 • 本業・副業先それぞれの労働契約の締結時期
 • 他社の所定労働日・所定労働時間
 • 他社で発生した所定外労働時間
 • 労働条件や勤務時間が変更された場合の内容

特に重要なのは、「週40時間働いている」という情報だけでは十分ではないことです。所定労働時間が週40時間なのか、残業を含めた実労働時間が週40時間なのかで、割増賃金や通算の判断が変わります。

原則的な労働時間管理|本人の申告をもとに他社分と通算する

原則的には、本人から申告された他社での労働時間と自社の労働時間を通算し、法定労働時間を超える部分や、通算して適用される上限規制に抵触しないかを確認します。

たとえば、他社で実際に何時間の所定外労働が発生したかを本人に申告してもらい、自社分とあわせて給与計算や労働時間管理に反映する運用です。

ただし、他社の勤怠データを本人経由で毎月正確に取得し、給与計算の締めまでに通算することは、企業・労働者双方に相応の負担がかかります。そこで厚生労働省が示しているのが、簡便な労働時間管理の方法である「管理モデル」です。

「管理モデル」とは?|ダブルワークの労働時間管理を簡便にする方法

管理モデルとは、副業・兼業を始める前に、先に労働契約を締結した会社(使用者A)の法定外労働時間と、後から契約した会社(使用者B)の労働時間について、それぞれ上限を設定して管理する方法です。
両社で設定する上限の合計を、通算して適用される時間外労働の上限規制の範囲内に収めておくことで、副業・兼業開始後に他社の実労働時間を逐一把握する負担を軽減できます。

★押さえたいポイント★
管理モデルは「労働時間を通算しなくてよい制度」ではありません。
あらかじめ上限を設定することで、日々の申告・通算管理の事務負担を軽減するための方法です。
また、管理モデルを使えば割増賃金が不要になるわけでもありません。
後から契約した使用者Bは、自社の労働時間について割増賃金を支払う取扱いとなります。

管理モデルを使う場合の基本的な流れ

厚生労働省が示す管理モデルの考え方を、企業実務に置き換えると次のように整理できます。

1.先に契約した会社(使用者A)で、法定外労働時間の上限を設定する
2.その上限を労働者を通じて後から契約した会社(使用者B)に伝える
3.使用者Bは、通算して適用される上限規制の範囲内で、自社の労働時間の上限を設定する
4.各社は、それぞれ設定した上限の範囲内で労働させる
5.使用者Aは自社の法定外労働時間、使用者Bは自社の労働時間について、必要な割増賃金を支払う

管理モデルは、使用者Aが労働者に対して利用を求め、労働者と、労働者を通じた使用者Bが応じることで導入する枠組みです。厚生労働省は「管理モデル導入(通知)様式例」も公開しています。

自社が後から契約する側で管理モデルを利用したい場合は、応募者本人を通じて、本業側が管理モデルによる運用を行うか確認する必要があります。自社だけで一方的に管理モデルを成立させるものではない点に注意してください。

ダブルワークの労働時間管理で最も崩れやすいのは「シフト管理」

管理モデルで上限時間を決めても、その情報が現場のシフト作成者に共有されていなければ運用は機能しません。たとえば人事部が「副業先で月30時間まで」と設定していても、現場責任者が知らなければ、繁忙時の追加勤務によって簡単に上限を超えてしまいます。
そのため、設定した上限は労働条件の書面だけでなく、日々のシフト管理にも反映させることが重要です。

• シフト管理表・勤怠システムに「Wワーク対象者」であることを表示する
• 月間の勤務上限時間を登録する
• 上限までの残り時間を確認できるようにする
• 残り時間が一定以下になったら人事・現場責任者へアラートを出す
• 追加勤務は現場判断だけで確定せず、上限確認を必須にする

担当者の記憶や本人の自己管理だけに依存させず、シフトを組む段階で超過を防ぐ仕組みにすることが、ダブルワークの労働時間管理では重要です。

上限時間を超えたらどうなる?

管理モデルは、あらかじめ設定した上限の範囲内で各社が労働させることを前提としています。設定した上限を超える勤務が発生すると、その前提どおりに運用できていないことになるため、原則的な方法によって実際の労働時間を確認し、通算して上限規制等への適合を判断する必要が生じます。

「忙しい日だけ1時間追加する」といった例外を積み重ねないためにも、上限に近づいた時点でシフトを止める運用ルールを先に決めておくことが重要です。

賃金設計の注意点|「割増込み時給」とだけ書くのは避ける

ダブルワークで自社の勤務時間がすべて割増賃金の対象となるケースでは、「最初から時給1,500円として、割増込みにすればよいのでは」と考えることがあります。
割増賃金をあらかじめ賃金に組み込む設計自体が直ちに認められないわけではありませんが、通常の労働時間に対する賃金部分と、時間外割増賃金に当たる部分を判別できるようにする必要があります。「時給1,500円(割増込み)」だけでは内訳が不明確になりやすいため、賃金構成は明示しておく方が安全です。


<記載イメージ>
例)基本時給:1,200円
時間外割増単価:1,500円(基本時給の1.25倍)
※本業の所定労働時間との通算により、当社における対象時間について時間外割増単価を適用する


本業側の所定労働時間や契約状況が変われば、自社で割増賃金の対象となる時間も変わる可能性があります。賃金設計と労働時間管理を別々に考えず、申告内容の変更と連動して見直せるようにしておくことが重要です。


本人の自己申告を機能させるために、社内ルールを整備する

ダブルワークの労働時間管理は、本人からの申告等を前提にする場面が多いため、「採用時に一度聞いて終わり」にしないことが重要です。厚生労働省も、副業・兼業の有無や内容を確認するため、届出制などの仕組みを設けることが望ましいとしています。
最低限、次の3点は書面や就業規則・社内手続きに落とし込んでおきたいところです。

• 副業・兼業の届出:勤務先、契約形態、所定労働日・所定労働時間、所定外労働の見込みなどを申告してもらう
• 変更時の再申告:本業の勤務時間・勤務先・契約内容などが変わった場合は速やかに届け出てもらう
• 申告内容と実態が異なる場合の対応:まずシフト調整や事実確認を行い、必要に応じて契約・運用を見直す

加えて、契約更新時や年1回など、定期的な再確認のタイミングを設けると、申告内容が古いまま運用されるリスクを抑えやすくなります。

ダブルワークの労働時間管理|企業向けチェックリスト

ダブルワークの労働時間管理を行う際のチェックリストをまとめました。

✓ 本人が他社でも「雇用契約」で働いているか確認した
✓ 他社の所定労働時間・所定外労働時間を把握する方法を決めた労働契約の締結順を確認した
✓ 原則的な通算管理と管理モデルのどちらで対応するか整理した
✓ 管理モデルを使う場合、各社の上限時間と通知方法を確認した
✓ 自社の36協定と予定シフトの整合を確認した
✓ シフト管理表や勤怠システムに上限時間を反映した
✓ 賃金の通常部分と割増部分を明確にした
✓ 副業・兼業の届出・変更時の再申告ルールを整備した

よくある質問(FAQ)|ダブルワークの労働時間管理

Q1.ダブルワークの場合、他社の労働時間を会社が毎月確認する必要がありますか?

原則的な管理方法では、本人からの申告等により他社の労働時間を把握し、自社分と通算して管理します。ただし、日々の通算管理の負担を軽減する方法として、一定の上限時間をあらかじめ設定する「管理モデル」が示されています。

Q2.他社の勤怠データを直接もらわなければいけませんか?

必ずしも会社同士で勤怠データを直接やり取りする仕組みではありません。厚生労働省のガイドラインでは、労働者からの申告等によって副業・兼業の有無・内容を確認する考え方が示されています。

Q3.管理モデルを使えば、他社の労働時間をまったく気にしなくてよいですか?

いいえ。管理モデルでは、副業・兼業の開始前に各社の労働時間の上限を設定し、その範囲内で勤務させます。上限設定や変更情報の確認は必要であり、上限を超えて勤務させた場合には原則的な通算管理が必要になる可能性があります。

Q4.ダブルワークの社員・パートの勤務時間は、本人任せにしてもよいですか?

本人の申告は重要ですが、企業側にも適切な労働時間管理が必要です。届出・再申告のルール、シフト上限、勤怠アラートなどを整え、本人の自己管理だけに依存しない運用にすることが重要です。

Q5.「ダブルワークだから月30時間まで」と会社だけで決めれば管理モデルになりますか?

自社だけで上限を決めれば自動的に管理モデルになるわけではありません。厚生労働省が示す管理モデルは、先に契約した使用者Aが求め、労働者と、労働者を通じた使用者Bが応じて導入する枠組みです。

まとめ|ダブルワークの労働時間管理は「申告・上限・シフト」の3点で仕組み化する

•ダブルワークでは、複数社で雇用されている場合、一定の労働時間規制について労働時間を通算する
•原則的な方法では、本人の申告等をもとに他社の労働時間を把握する
•管理負担を軽減する方法として、厚生労働省は「管理モデル」を示している
•管理モデルは割増賃金を減らす仕組みではなく、申告・通算管理の負を軽減する仕組み
•決めた勤務上限を現場のシフト管理・勤怠管理まで反映する
•採用時だけでなく、変更時・契約更新時にも副業状況を再確認する

ダブルワークの労働時間管理で重要なのは、「他社の勤怠を完璧に管理しなければならない」と考えることではなく、必要な情報を本人から申告してもらい、勤務上限とシフト管理を連動させることです。原則的な通算管理の負担が大きい場合は、管理モデルの利用可否も含め、自社で継続できる運用を設計しましょう。

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【参考】
•労働基準法38条1項
•厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」および関連資料
•厚生労働省「副業・兼業の場合における簡便な労働時間管理のポイント 労使双方の負担を軽減する『管理モデル』」
•厚生労働省「副業・兼業に関する各種様式例(副業・兼業に関する届出様式例、管理モデル導入(通知)様式例等)」

本記事は2026年8月時点で確認できる法令・厚生労働省資料等に基づく一般的な解説です。個別の事案について結論を保証するものではありません。実際の判断にあたっては、所轄の労働基準監督署または専門家にご確認ください。