【社員の健康診断】受診時の費用、受診時間中の賃金はどうするのか?

2020.03.07

社員の健康診断において受診時の費用や受診時間中の賃金についてもよくご質問をいただきますので、本記事においてまとめました。ご覧下さい。

健康診断受診費用について

健康診断(定期健康診断)及び特殊健康診断(後述参照)に係る費用は、全額会社負担となります。

安全衛生法に基づき、健康診断には必ず実施しなければならない法定項目があります。安全衛生法に定める検診(法定検診)は必要最低限ものとなっており、協会けんぽで実施している健康診断(生活習慣病予防検診)の方が充実しております。

この協会けんぽが実施する生活習慣病予防検診は国が費用の一部を負担してくれます。
この生活習慣病予防検診を定期健康診断として利用し、且つ生活習慣病予防検診に係る費用を全額会社負担とするのが良いと思います。

尚、生活習慣病予防検診に、その他オプション検査等を自らの意思により付加した場合は、その費用は会社負担とせず、本人負担とするのが良いと思います。

健康診断受診時の賃金について

健康診断には大きく分けて「一般健康診断」と「特殊健康診断」があります。

●一般健康診断(定期健康診断を含む)受診時の賃金

一般健康診断とは、職種に関係なく労働者の雇入れ時と、雇入れ後1年以内ごとに一回、定期的に行う健康診断です。(定期健康診断)

一般健康診断(定期健康診断)は、健康確保を目的として会社に実施義務を課したものとなります。日常の健康確保を目的としている以上、業務遂行と直接の関連性がある訳ではありません。よって、「受診時の賃金は労使間の協議によって定めるべきもの」になります。

つまり、一般健康診断(定期健康診断)を受診した時間については、賃金を支払う義務はないのです。もちろん円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を会社が支払うことが望ましいといえます。

「一般健康診断は業務遂行との関連性において行われるものでないため、当然に事業者の負担とすべきものではなく、労使協議して定めるべきもので、健康診断の受診に要した時間の賃金は事業者が支払うことが望ましい。(昭47.9.18基発第602号)」

●特殊健康診断受診時の賃金

特殊健康診断とは、以下の有害な業務に常時従事する労働者等に対し、原則として、雇入れ時、配置替えの際及び6月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回)、実施しなければならない特別の健康診断です。

特殊健康診断は、業務の遂行に関して労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断ですので、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要です。

<特殊健康診断の対象業種について>

・ 屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者 (有機則第29条)
・ 鉛業務に常時従事する労働者 (鉛則第53条)
・ 四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者 (四アルキル鉛則第22条)
・ 特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る) (特化則第39条)
・ 高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者 (高圧則第38条)
・ 放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者 (電離則第56条)
・ 除染等業務に常時従事する除染等業務従事者 (除染則第20条)
・ 石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する
労働者及び過去に従事したことのある在籍 労働者 (石綿則第40条)

(じん肺健診)
・ 常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある管理2又は管理3の労働者 (じん肺法第3条、第7~10条)
※ じん肺の所見があると診断された場合には、労働局に健診結果とエックス線写真を提出する必要あり。

(歯科医師による検診)
・ 塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所に おける業務に常時従事する労働者 (安衛則第48条)