【慶弔休暇制度】結婚・死亡等の場合、慶弔休暇は与えなければならないのか?

2019.06.13

設立間もないベンチャー企業様から、よくあるご質問の一つとして、「社員が結婚した、社員のご親族が亡くなった際の慶弔休暇」についてご質問を頂きます。ここでは、社員の慶弔事に関する対応をご説明致します。

慶弔休暇に関する「労基法上の決まり」はない

まず第一に、結婚や忌引き、その他慶弔ごとに対し、休日を与えなければならないとする労基法上の決まりはありません。

年次有給休暇は法定要件に達した場合、必ず与えなければなりませんが、慶弔休暇は法律上の義務ではなく、あくまで労基法で定められた基準を上回る措置(法定外の福利措置)となります。つまり会社に慶弔休暇制度がなくても法違反にはならないのです。

慶弔休暇制度がない場合は、社員が保持している年次有給休暇を用いれば有給使用日として、賃金の控除はありません。
社員が年次有給休暇を使用しない場合は、労働義務のある日に欠勤する訳ですから賃金控除の対象となります。

■有給使用  ⇒  労働義務のある日の労働を免除 (賃金控除なし)
■欠勤    ⇒  労働義務のある日に労働しない (賃金控除あり)

慶弔事により休むことは、誰にでも起こり得る可能性があり、やむを得ないものと言えますが労働していない以上、所謂、「No Work No Pay」の原則が適用されます。

慶弔事により休むことは、誰にでも起こること

とはいえ、休まざるを得ない状況に対し、法で定められている制度ではないとはいえ、会社が何もしないというのは少々酷なような気がします。

そこで約90%を超える会社では慶弔事の定義を定め、対象となる親族や休暇の日数を定めた慶弔休暇制度を取り入れております。

具体的な日数、対象なる親族については、会社の裁量によりますが、導入には就業規則その他により定めることになります。

一例を挙げます。

慶弔休暇制度の導入における注意点

慶弔休暇制度を導入する際の注意点をご紹介します。

有給とするのか、無給するのか?を決定しておく

慶弔休暇は有償扱いの休暇とするのか、無給とするのか?とするのか規定します。先に記載したとおり、慶弔休暇は労基法で定められてものではなく、法定外の福利措置となります。
よって、賃金を支給するのも不支給とするのも会社の裁量の範囲です。私見ですが、法定外の福利措置を設ける以上、慶弔休暇については通常勤務と同様に賃金を支給するのが良いと思います。
その場合、付与する日数とのバランスを考慮する必要があります。

●日とせず、●労働日とすること

導入後の質問として多いのが、慶弔休暇の日数に会社の休日が入った場合の取扱いについてです。
    
例えば金曜日に結婚した場合、上記例では5労働日となりますが、
5日間とすると解釈に齟齬が生じる可能性があります。

■5労働日の場合   金・土・日・月・火・水・木   慶弔休暇5日+休日2日
■5日間の場合    金・土・日・月・火       土日含めて5日

慶弔休暇の対象となる日によって、損得が生じてしまいますので、公平な制度にする必要があります。

必要以上に長期としないこと

ベンチャー企業に於いては、慶弔休暇を必要以上に長く設定するより、平均的な期間とし、足りない部分は年次有給休暇を充ててもらうことも視野に入れても良いかもしれません。

2019年4月より年次有給休暇の5日の取得が義務付けられましたので、足りない部分について年次有給休暇を使用してもらえば有給消化に繋がります。

対象となる社員区分を明記すること

慶弔休暇制度を全社員(正社員・契約社員・パートタイマー・嘱託等)に適用するのか一部社員のみに適用するのか?考慮する必要があります。

慶弔休暇は法定外の福利措置であるため、どの社員区分に対し適用するのか?は会社が独自に定めることができます。(就業規則等により規定する)
正社員と同様の時間働く契約社員や、フルタイムパートにも同様の日数を与えることも可能ですし、働いている日数、時間によって正社員とは異なる制度を設けることも可能です。それぞれの社員区分に応じた就業規則に制度の有無、内容を明記しておく必要があります。

申請における留意点

考えたくはないことですが、虚偽の報告によって慶弔休暇を利用する社員が出てくる可能性もあります。
慶弔事はプライベートなものであるため、確認書類等を求めることに対し、否定的な反応を示す社員がでることもあり得ます。

慶弔休暇は法定外の福利措置以上、会社は慶弔休暇取得者に対し、事実確認の為、確認書類を求めることもあり得ること等、規定しておくと良いでしょう。