管理監督者とは

管理監督者とは、「職務内容、責任と権限」、「勤務態様」及び「賃金等の待遇」の実態を踏まえ、労務管理について経営者と一体的な立場にあるか否かで判断する必要があります。

具体的には以下4つです。

A 労働時時間、休憩、休日等に関する枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
B 労働時時間、休憩、休日等に関する枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること
C 実際の勤務態様が労働時間の規制になじまないものであること
D 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

ここで難しいのが、以下の3つの判断です。

「職務内容、責任と権限」についての判断要素
「勤務態様」についての判断要素
「賃金等の待遇」についての判断要素

次章から詳しく解説します。

「職務内容、責任と権限」についての判断要素

(1) 採用、配置の人事権があるかどうか

アルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む)に関する責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。

             

(2) 解雇権が付与されているかどうか

アルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。
       


(3) 部下に対する人事考課権利があるかどうか

人事考課の制度がある企業においては、部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれてなかったり、実質的にも関与していない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。
                   

 
(4)勤務管理、残業命令権があるかどうか

勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。

「勤務態様」についての判断要素

管理監督者は「現実の勤務態様も、労働時間の規制になじまないような立場にある者」であることから、「勤務態様」については、遅刻、早退等に関する取扱い、労働時間に関する裁量及び部下の勤務態様との相違により、次のように判断されるものであること


(1) 遅刻、早退等に関する取扱い

遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。

ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理が行われることから、これらの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはなりません。


(2) 労働時間に関する裁量

営業時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する補強要素とななります。


(3) 部下の勤務態様との相違

管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合には、管理監督者性を否定する補強要素となります。

「賃金等の待遇」についての判断要素

管理監督者の判断に当たっては「一般労働者に比し優遇措置が講じられている」などの賃金等の待遇面に留意すべきものであるが、「賃金等の待遇」については、基本給、役職手当等の優遇措置、支払われた賃金の総額及び時間単価により、次のように判断されるものであること

(1) 基本給、役職手当等の優遇措置
基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する補強要素となる。

(2) 支払われた賃金の総額
一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。

(3) 時間単価
実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる。

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