社員の副業・兼業に関する注意点

2019.06.13

昨今、社員の副業・兼業に関するご質問が増えています。
厚生労働省でも「働き方改革実行計画」を踏まえ副業・兼業の普及促進に努めており、平成30年1月には、「兼業・副業の促進に関するガイドライン」も作成されました。
また労働局よりDLできる、モデル就業規則にも兼業・副業に関する条項がまとめられております。今後益々、増えてくるであろう兼業・副業についてご説明するとともにその注意点について記載します。

社員の副業・兼業に関する法律的な決まりきあるのか?

兼業・副業とは法律的な定義は特に定められておりません。
中小企業庁では兼業・副業とは、「一般的に収入を得るために携わる本業以外の仕事を指す」と定義されております。一般的には本業を持つ労働者が、空いた時間や休日に本業とは異なる他社の仕事や自らの事業に従事し、収入を得ることを指します。

これまでは情報漏洩によるリスク、過重労働により本業での業務に支障が出る等の理由で兼業・副業を禁止している会社が多く見受けられました。
今後は上記問題を回避しつつ、本業と副業・兼業により過重労働にならないような取り組みを行うことを条件に多種多様な兼業・副業が認められていく時代になって行くのではないでしょうか。

それでは副業・兼業のメリットについて労働者、企業それぞれの視点で見ていきます。

社員にとっての副業・兼業メリット

①離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を
 得ることで労働者が主体的にキャリアを形成することができる。

②本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、
 自己実現を追求することができる。

③所得が増加する。

④本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で
 将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

(兼業・副業に関するガイドラインより抜粋)

企業にとっての「社員の副業・兼業」のメリット

①労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。

②労働者の自律性・自主性を促すことができる。

③優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。

④労働者が社外から新たな知識・情報、人脈を入れることで、
 事業機会の拡大につながる。

(兼業・副業に関するガイドラインより抜粋)

社員の兼業・副業で注意しなければならないこと

労働者及び会社にとって共通するメリットとして、副業・兼業に於けるスキルアップ、新たな経験を得られる等が挙げられます。今まで身に着けていなかった新たな知識や技術を身に着けること、従前来持っていた知識をブラッシュアップすること、より多角的な視野で物事を見ること等々も含まれ、働き方の多様化に繋がるといったことが挙げられるでしょう。

しかし、その一方で注意しなければならないことも生じてきます。

企業秘密の漏洩・守秘義務に抵触する可能性

社員の兼業・副業先が本業と競業企業の場合、どうしても企業秘密漏洩の心配が付きまといます。何気ない会話から重要な秘密を漏らしてしまう、本業で普段使用している業務ツールを兼業・副業先で使用、共有してしまう等、情報が漏洩してしまうリスクが生じます。

副業によって重労働になる可能性

本業に従事する時間とは別に、新たに兼業・副業時間が追加されます。当然、労働時間は兼業・副業を行う分、長くなりますので健康に支障を来たすことも容易に想定できます。
また兼業・副業に夢中になることで疲労し、本業でのパフォーマンスが落ちてしまう等本末転倒な事態になりかねません。

副業によって「過重労働」になった際の企業責任の有無

社員が過重労働になってしまった際の本業と副業先の責任についてです。
兼業・副業により加重労働になった場合、本業・副業・兼業先のいずれの問題になるのでしょうか?責任所在ですが、結論から申し上げると、ケースバイケースであり、以下のいずれかから判断されると推察致します。

①会社が強制したものでなく、本人が自ら希望して本業以外での就労(兼業)を希望する以上、働くべき時間は労働者の自己責任であり本業も副業・兼業先も双方に企業責任は生じない。

②兼業先は、労働者が本業を持っていることを認識しているので、本業での労働時間を踏まえ、加重労働とならないような配慮を兼業・副業先が考慮すべきである。

③兼業希望者に対し、許可したのは本業であるので、労働者の労働時間等の把握について、本業が責任をもつべきである。

過重労働に係る企業責任については、状況に応じ①~③のケースバイケースになると推察致しますが、兼業・副業を許可する立場であるならば、特に③の要件を特に注意する必要があります。

何故なら兼業・副業を許可制とするのであれば、本業の他に別途労働時間が増えることを当然知った上で、許可・不許可の判断を下すことになるからです。
つまり過重労働になり得るリスクを想定できる立場にあったということになりますので、責任を問われる可能性も増えてきます。

労使それぞれが良かれと思って兼業・副業を申請し、そして許可したにも関わらず、過重労働となってしまった。そして過重労働の土壌を作ったと責任を追及されてはかないません。

よって許可を下す本業では兼業・副業を許可制とするだけに留まらず、許可後の就労についても、上記の点について常に留意しておくのが良いでしょう。